母子家庭専用の戸建て賃貸を紹介する一般社団法人に話を聞きました
「空地空家で"困ったとき"のあなたの街の相談窓口」の記念すべき初取材は三重県伊勢市から。
年の瀬が近づく12月下旬、伊勢に取材(+お伊勢参り)に行ってきました。
シングルマザー専用の戸建て賃貸を紹介する一般社団法人を共同運営している森田成峰氏、西井真理子さんに活動の詳細を伺いました。
プロフィール
- 森田成峰氏
- 一般社団法人
ひとり親支援えがおの輪
代表理事
- 西井真理子さん
- 一般社団法人
ひとり親支援えがおの輪
代表理事
いなべ市議会議員
- 西上正通氏
- 株式会社JKAS
代表取締役
- 森下政人氏
- J K A S
空地空家で”困ったとき”の
あなたの街の相談窓口
代表
- 石田 栄一氏
- J K A S
離婚とお家で
“困ったとき”の
あなたの街の相談窓口
代表
一般社団法人設立のきっかけ
「日々の生活で、騒音や隣人を気にして子どものしたい事に蓋をしてしまっているのでは。自由を奪ってしまっているのではないか。」
森田氏が子どもの住環境について考えるようになったきっかけは、自身のアパートでの子育て経験でした。
「二人でも大変なのに、ひとり親家庭の負担はより大きくなるため、子どものための住環境まで、更に手が回りにくいのでは。」
自身の子育て経験での気づき以外に、ひとり親家庭の住まいの問題についても考えるようになった森田氏。なんとか解決できないかと日々考えていた所、戸建て住宅に住む事でこれらの問題が軽減されるのではないかと思った事が、一般社団法人を設立した理由だそうです。
戸建てに住むことで、子どもが何も気にせず自由に動き回り、主体的に行動できるようになるのでは。お母さんも注意する事が少なくなり、笑顔が増えるのではないかと森田氏は言います。
「お母さんの笑顔が増えると子どもの笑顔も増えるんです。戸建てにはその力があるんじゃないかと思います。」
森田氏が、会合で出会った西井さんに自分の想いを話したところ、
「私もちょうど同じような事を考えていたんです。」と西井さん。
シングルマザーである彼女自身も賃貸アパートでの子育てを経験し、戸建ての多い地域で子どもを他の子のように伸び伸びと育てられない事に悩みを抱えていたと言います。また西井さん自身、賃貸大手の出身で業界経験もあることから、母子家庭で限られた物件にしか住むことができない方々について何かできないかと思っていたそうです。
不動産業に携わる二人は意気投合し、すぐに戸建てをシングルマザーの方に提供する『一般社団法人ひとり親支援えがおの輪』を設立するに至りました。
左:西井さん、右:森田さん
厳しいシングルマザーの住環境
「実際、シングルマザーの賃貸探しは厳しいです。オーナーが元々シングルマザーに貸し出す事にNGを出していたり、保証会社によって断られる事があり、物件の選択肢が限られてきます。
特に離婚したての小さいお子さんのいる無職の女性は厳しい状況です。」と西井さん。
結果、門前払いをされたり、人気のない物件等に住まざるを得ない場合があるそうです。
また、世帯収入も低くなるため世間の平均家賃よりも低い物件となり、子育てが厳しい物件に住まざるを得ない場合もあります。
子どもの年齢が上がると、アパートやマンションでも問題無いという人が多いそうですが、思う存分自由に動き回りたい年齢の子どもたちの住環境がシングルマザーの場合は制限されてしまっているのです。
「戸建てが子育てに良い環境だと分かっていても、元々家賃が高く、料金の折り合いも難しそうですね。」と石田氏。
「そこが最大のネックでした。でも、通常7万円の家賃をご自身のローン返済額と同等の4万円ほどで貸してくれる善意のオーナーさんのお陰で実現する事ができたのです。」と西井さん。
地方でも戸建ての賃貸の数は少ない中、二人の想いに共感し、戸建て物件を相場より安く貸してくれるオーナーさんが現れたそうです。
活動を広げていくための
2つの課題
善意のオーナーさんのお陰で目的は実現できたのですが、今後更に二人の活動を広げていく為には解決していかなければならない課題があると言います。
② 活動に共感してくれるオーナーを探していかなければならない。
行政との関りの可能性
① の課題について、SNS発信等もしつつ、行政との関わりも視野に入れていくのはどうかと森下氏が提案しました。
一人親家庭が地方に住むことにより、空家問題の解消や、将来的な人口も維持できる上、子育て支援もそこに上手く繋がると、何か効果が生まれるのではないかと。
「そうですね。シングルマザーへの住宅支援はまだまだ充実していないのが現状ですし、可能性は広がりますね。」(西井さん)
「こちらから積極的に行政に働きかけていきたい問題ですね」(西上氏)
「行政が行っている一人親家庭や低所得者、高齢者への住居斡旋はありますが、都営や市営住宅が主なので、そこに戸建ての選択肢も増えるといいですね。行政と組むことで影響力も爆発的に増えそうです。」(石田氏)
「確かに、子どもの住環境への理解が深まり、今後戸建てにまで広げていければ良いと思います。」(西井さん)
左:石田氏、右:森下氏
共感してくれる仲間を広げたい
「一般社団法人立ち上げ時に同じような団体が無いか探したのですが、地方はまだまだ少ないです。住まいをサポートする団体も無いですし。やはり認知度を上げていくのが重要だと思っています。今後は社会福祉協議会での講演などもしていきたいです」と森田氏。
「ハード(支援団体や物件)が足りないけど、ニーズ(住宅サポートを必要とする人)は多くありそうですね。」(西上氏)
地方では空家を買う個人投資家も増えてきて、良い物件を探す事が競争になっているそうですが、競争相手となる個人投資家やオーナーに活動の趣旨や想いを伝え、共感してもらえる人を増やすことが解決に繋がるのではと西上氏。
更に、同じ想いを持つ人を増やしていく活動はJKASと通じる所があり、また得意とする事なので、活動の認知度を広げる事に協力していきたいと語りました。
西上氏
シングルマザー専用シェアハウス
続いて、シェアハウスの話題となり、②の課題について解決の糸口が広がりました。
「JKAS本部に安藤さんというシェアハウスのエキスパートの女性がいるんです。
今回、お二人の活動を聞いて、安藤さんの事業である、女性向けシェアハウスとリンクしたシングルマザー向けシェアハウスがあればとても良いんじゃないか。」と西上氏。
「それ、とても良いですね!シングルマザー向けのシェアハウスは作りたいと思っていました。1つの大きな家族のような感じでその中で雇用も生み出せたらいいなと。
当番制で子どもを見て助け合いながら、その中で仕事ができ、母親が自立していけるようになるのが理想です。」(西井さん)
「ぜひ共同でシングルマザー向けシェアハウスを作りたいですね。」(西上氏)
「そうですね!人口の多い四日市や桑名市辺りで需要がありそうです。1世帯に貸すよりもオーナーさんにとってもメリットがあるんじゃないかと思います。」(西井さん)
「一般社団法人で借り上げ、シングルマザーの方へ転貸してあげる事ができれば、今までシングルマザーに貸すことに抵抗のあったオーナーさんの物件も借りることができて物件の幅が広がりますね」(森下氏)
「大きな物件を何家族かで分け合えば家賃も安くなるし良いですね。」(西井さん)
「更に、そこで行政の訪問を受ける事ができる、又は行政サポートの案内や情報を知ることが出来る等、様々なサポートがあると安心だと思います。
シングルマザーの方は本当に色んな事を一人で背負って頑張ってらっしゃいます。子どものため、将来のためを思って働く一方、子どもを一人にしてしまう事になるので、誰かが見てくれるシェアハウスは安心ですね」(西井さん)
「我々ができる事は住環境に関する事に限られてしまいますが、行政、医療、福祉等のサポートと繋がる事によって、シングルマザー向けのシェアハウスはもっと良い仕組みになるのではと思います。」(森下氏)
「今回皆さんとお話する事で、今まで以上に話が広がり良かったです。
オーナーから借り上げてシングルマザーの方へ賃貸するモデルはぼんやりとはできていたのですが、やはりオーナーさん次第の所があって…はっきりとこの方針でいこうとまでは決めていなかったんです。
シングルマザー向けシェアハウスにはとても関心を持ちました。シングルマザーの中にはDVの被害に遭った人も結構いて、離婚後も関係を断つのが大変だと聞きます。相談できる人も少ないので、仲間づくりが大切だと思うのです。
そういったDV被害にあった人たちが頼れるシェアハウスもあるといいなと思います。」(森田氏)
「DVだけでなく、義理の親からの虐待など子どもに被害が及ぶニュースも多く聞きます。子どもたちが被害に遭わないような、そんな軌道修正ができる団体になれればよいですね。」(森下氏)
「一緒にいる親も、離れた方の親も子どもの事は心配です。子どもを見守る第三の目が必要だと思います。シェアハウスなら誰かが見てくれている安心感がある。また運営側もシングルマザーの方が担う事で、先ほど言われた雇用も生まれるので良いです ね」(石田氏)
「シングルマザーさんのコミュニティを作って、シェアハウスで親子で定期的に集えるようにすれば良いですね。私、今その絵が目に浮かびました笑」(西上)
「それ、凄くいいですね笑」(西井)
「少し話はそれますが、親子のためのサードプレイスという取り組みをしている団体が神戸にあります。(PORTO | おやこの世界をひろげるサードプレイス)もし、この辺りでも同じような団体があればうまく結びつけられるのではないでしょうか? 学童のような施設がある物件、こども食堂のある物件など、友だちや近所の子どもたちも集えるような場を作れるんじゃないか と思います。」(森下氏)
シェアハウスと地域コミュニティを結びつけることで色々な可能性が広がりそうです。
地域コミュニティの大切さ
「年齢的に少し上になるのですが、中高生の居場所をつくる取組をしている団体が桑名市にあります。(NPO法人太陽の家)
中高生の集まる場まで行政のサポートが無いため、家出してきた子たちの場所を作ったりしているそうです。いずれそういう場所づくりもしていきたいです。」と西井さん。
「そういう居場所があることで、トーヨコキッズ※やドン横キッズ※と呼ばれて犯罪に巻き込まれてしまう子どもたちを守ることができますね。」子どもの虐待や非行問題に心を痛める森田氏は言います。
※ドン横キッズ:名古屋の「ドン横(栄のドン・キホーテ横)」でたむろをする若者の集団
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 )
村や近所のコミュニティが無くなりつつある今、人との関わりがより大切で必要になってきています。想いに共感し、皆が集い、助け合えるコミュニティをこちらから作っていくことがとても大切だと今回実感しました。同じ想いを持つ同志として、 JKASは今後もお二人と協力し合っていきたいです。
二人の想い
最後にお二人に一般社団法人を立ち上げた想いを一言お願いしました。
「子どもは未来の宝物。子ども達が自立できるような世の中を私たち大人が残していき、そしてしっかりサポートしていきたいです。」(森田氏)
「子どもの気持ち、お母さんの気持ちを大切にしていきたいです。ママの笑顔を増やして子どもも幸せになってもらいたいと心から思っています。」(西井さん)
素敵なお言葉ありがとうございました。
お二人の子どもに対する熱い想いに感動しながら伊勢を後にしました。